大編成のプロフェッショナル・オーケストラによる全曲世界初演の試み。
作風も創作のポリシーもそれぞれ異なる4人の作曲家が、オーケストラ音楽の歴史的文脈と
未来への視座を抱きつつ、それぞれの視点に基づいて自らの創作を探求してゆくための機会を
会員相互に共有し発表する、というのが本企画「オーケストラ・プロジェクト」の目的です。
本「オーケストラ・プロジェクト」は今回(2017年)で32回を数えますが、このコンサートからは
今まで、多くの日本を代表する作品が生まれ、我が国におけるオーケストラ作品の主要なアーカイヴの
蓄積と演奏実績を今日まで着実に積み上げて参りました。
2017年度の本公演は、現代音楽の領域における世界的権威であるジョナサン・ノットが2014年から
音楽監督として率いている東京交響楽団によって、我が国における現在最高の現代音楽の実践者の
一人である作曲家・指揮者の杉山洋一氏の指揮の下、石島正博(1960-)、国枝春恵(1958-)、
平井正志(1957-)、鈴木理恵子の4人の作曲家によるオーケストラのための新作を、2017年11月17日に
東京オペラシティ コンサートホールにて世界初演いたします。
初演作品4曲の内、石島、平井作品は独奏者を伴わない3管編成によるオーケストラ曲、国枝、鈴木作品は
邦楽器を核とした協奏曲で、それぞれの作曲家が日本の内と外、個々の内省と投企などを踏まえ、
コンサートのスローガンとした「『響生』 〜生命の音、時空を超えて〜」の言葉のもとに、
それぞれが自らの創作活動における新しいパラダイムの提言を目指しています。
『響生』は、日本や人類という言わば限られたトポスや分類を超えた、さまざまな生命が
響き合う場所、概念を意図した造語であり、現在の地球上で、異なる人種、宗教間の対立、
人権侵害や広がる経済格差、気候変動やエネルギーなどの環境問題、自然破壊と多くの絶滅危惧種、
あるいはSingularity(人口知能が人類の知性を超える日)やクローン技術などが現実問題となって
いる今、わたしたちは作曲家として何をやってきて、何故に、何処に向かって作曲するのか
、という問いに答えるべき言葉を探して考えたものでした。
オーケストラは言わば響きのモザイクです。わたしたち一人一人が創り出す交響の世界を一人でも
多くの方々に届けたい。互いの価値観を超えた生命に共感する音を、音楽を、わたしたちは紡ぎたい。
そんな願いをわたしたちは共有しています。